燈台草の根

大学生による日記

うたかたの日々

 日ごとに気温が高くなっているような気がします。先週なんか、初夏の予感を感じました。夏は好きな季節なので(何故か物語的なイメージがするから)嬉しいです。 
 二日間かけてゆったりと、光文社古典新訳文庫の『うたかたの日々』を読みました。
 私たちの生きる世界に限りなく近い、しかし確実にずれている世界で彼らが送るのは、少しずつ幸福をすり減らしていくような日々。
「まぶたを切る」おめかし、水道を住処にするうなぎ、心臓抜きという凶器、恋人の胸を蝕む睡蓮の生長。明らかにおかしいのに、なぜか、自然に受け取ってしまう、そんな雰囲気が漂っている作品です。そういう意味では、小川洋子さんの小説もこの物語の影響を受けているのではと感じました。
 一番お気に入りの言い回しがこちらです。この作品はとにかく文体が美しく、うっとりするものばかりです。

コランはあまりに親切だったから、そのほっそりとした手の血管の中で彼の想いが揺れ動くのが青や薄紫色に透けて見えるほどだった。

 

うたかたの日々 (光文社古典新訳文庫 Aウ 5-1)

うたかたの日々 (光文社古典新訳文庫 Aウ 5-1)